『体験の言語化』
(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター編、成文堂、2016)
本書の詳細は成文堂の以下のページをご覧ください。直接購入することも可能です。
http://www.seibundoh.co.jp/pub/search/030727.html

*第5部 第3章 「体験の言語化」の今後の可能性(「一 はじめに」と「五 おわりに」を掲載)

一 はじめに

平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)は2002年の発足以来、数多くの学生をボランティア現場に派遣するとともに、学生自らが企画し実施するボランティア活動を支援している。当初より、ボランティア活動を単なる一過性の活動で終わらせることなく、学生自らの成長につなげていくためには何が必要かとの問題意識を持ち、様々な試みを行ってきた。とりわけボランティア活動における「ふりかえり」については、いずれの教員もその重要性と可能性を認識しており、それぞれのやり方で「ふりかえり」を実践してきた。「体験の言語化」はこれらの実践を踏まえ、「ふりかえり」を体系化、標準化したものである。

体験の言語化の開発過程や授業内容、またその意義やそれを通した学生の成長などについては既に詳しく述べられている。ここでは、その成果を踏まえた上で、今後の可能性について3つの側面から考察する。

五 おわりに

ボランティア活動における「ふりかえり」から始まったWAVOC教員たちの教育方法開発をめぐる冒険は「体験の言語化」という体系化されたアクティブラーニング型授業として結実した。その成果については本書の各所で述べられているので、本稿では今後の可能性を、1.横への拡張(「言語化」を社会以外の文脈に収斂させるモデルを作ることにより、スポーツや外国語学習や専門的な学問分野への拡がりを期待できる)、2.縦への拡張(「体験の言語化」は高校段階でも有効であり、高校の教員との協働により高校の現場に合った拡張プログラムを作るのが望ましい)、3.裏への拡張(「体験の言語化」をファカルティ・ディベロップメントの場として活用する)の3つの側面から考察した。

もちろん、現行の「体験の言語化」をより精緻なものとしていく努力は必要であるが、「体験の言語化」の拡張により、あらためて方法論や内容についての重層的な議論が深まることが期待でき、全体として大きな進展があると考えている

本書には『授業者用ガイドブック』そのものを資料として掲載していないが、近いうちに何らかの形で公開し、日本の大学における授業方法の転換の一助となることができればと考えている。