新型コロナウイルス感染症の流行が始まって2年が経とうとしています。中国での流行が伝えられた頃は他人事のように感じていましたが、3月初めの全国的な臨時休校から、日本の全ての児童・生徒にとって自分たち自身の問題になりました。コロナは私たちの生活をすっかり変えてしまいました。最近になって少しずつ以前の生活に戻ってきましたが、まだまだ元には戻りません。マスクのない学校生活はしばらく先になります。  

このように私たちの生活は大きく変わりました。では私たちのものの見方や考え方はそれにより変わったのでしょうか?高等部3年生にこのことについて考えてもらいました。  

多くの人が、ものの見方や考え方に変化があったと考えているようです。中でも多かったのが、日常に対する考え方の変化です。日常というものは永遠に続くものではない、今あると思っているものがいつ無くなってしまうか分からない、だからこそ今に感謝し、全力を尽くさなければならないと考えるようになった、というものでした。毎日の学校、部活、友達との語らい、当たり前だと思っていたこれらのことが、失われて初めて貴重なものだったと気づいたようです。  

これまでは朝早く自宅を出て、部活を終えて自宅に帰ったら、夕食、入浴の他は自分の部屋で必要な予復習をちょっとしてそのまま寝るだけ、という生活を送っていた人が多かったようです。臨時休校や遠隔授業期間中は一日中家にいることになり、毎日の家事やリモートワークに取り組む家族の姿が目に入ってきます。そのことから、自分の生活が自分以外の家族によって支えられていることに気づいた人も多くいました。  

また、自宅でのゆとりある時間は、これまでの自分を振り返り、これからの自分についてじっくり考える機会になったようです。社会への関心も増加しました。コロナの感染状況はどうなっているか、対策はどう進んでいるか、これまでになく新聞やテレビ報道をよく見ていたようです。ネットでの情報収集も行われていました。うわさ、憶測、フェイク、あふれる情報の中からどうやって必要な正しい情報を見つけ出すのか、情報との付き合い方の大切さをあらためて認識した人も多かったようです。  

一方で、ものの見方や考え方に変化がなかったという人もいました。自分自身で確固とした生活のリズムを持っていた人、外的な活動にあまり重きを置いていなかった人たちです。  

まだ幾度かの流行拡大はあるでしょうが、いずれは終息します。学校生活もかつてとあまり変わらないものに戻っていくでしょう。しかし、コロナ中に経験したこと、考えたことは消え去ることはありません。同じような日常、同じような学校生活でも、それを過ごす皆さん自身には変化があるはずです。

この冬休みに、コロナ中に考えたこと、感じたことを自分自身で整理しておいてもらえたらと思います。

原載:『早実通信』208号(2021年12月)